今日も快晴!スズメたちも朝から気持ちよさそうに歌っている。私の心も、幸せ満タン!今週も頑張れそう。ああ、なんて最高な朝!
「ぶーッッ!」
……この幸せな空気を一瞬でぶち壊すワード。言わずもがな、瑛里だ。私の気分はジェットコースターの急降下。なんて最悪な朝なの。
「瑛里、だからいい加減“ぶー”って呼ばないで。」
呆れ顔の私をよそに、まるで気にする様子もない瑛里。どうしたら、私の気持ちを理解してくれるんだろう。
「ねえ、ぶー。今日、プリクラ撮って帰らない?」
「私、パス!」
「相変わらず付き合い悪いなあ。いつになったらプリクラ付き合ってくれるのよ?」
「瑛里は彼氏と撮ればいいじゃん。って、この会話、何回目?」
ほんと、私の言葉なんて聞く耳持たない。
前に「ぶーってどういう意味?」って聞いたら、『動物のぶたさんからお借りした、ぶーだよ!』だって。悪びれることもなくニコニコしてるから、怒る気も失せたけど……でも‼︎どう考えても酷い!本当に失礼しちゃう。
「おーい!真瑠璃!」
振り返ると、隆也が爽やかな笑顔で手を振りながら駆け寄ってきた。救世主の登場だ!
「隆也!」
「ちょっと隆也!私もいる!瑛里もいる!」
ムッとした顔で、隆也の肩をつつく瑛里。
「おっ、ごめんごめん。なあ、真瑠璃のグルメ日記、書いた?」
「書いたよ!」
「見せて!」
鞄からノートを取り出す私を、瑛里が面白くなさそうに眺める。
「ねえ、今日三人でフラペ飲んで帰ろ?お願い!」
甘えた声でほっぺにゲンコツを作りながら隆也を見上げる瑛里。さっきまで『ぶーぶー』言ってたのに、この豹変ぶり!まるで大女優。
「あっ、俺はいいけど。真瑠璃は?」
グルメ日記を眺めながら、上の空で答える隆也。
「プリクラじゃないからオッケー!」
――本当は、瑛里と二人じゃないからオッケー。隆也が一緒なら、瑛里も付き合いやすい。
「そうこなくっちゃ!」
急にご機嫌になる瑛里。まったく、ほんとわかりやすい。
プシュー。
バスの扉が開き、三人で乗り込む。
隆也が日記を眺めている隣で、瑛里は不機嫌そうに日記を覗き込む。そのあからさまな態度も、まあ瑛里らしい。
「瑛里!」
バスの後方から名前を呼ぶ声。途端に瑛里のテンションが急上昇!揺れるバスの中を進んでいく。
「篤人くん!なんで?びっくり!」
……篤人くん⁉︎ これが瑛里の新しい彼氏?
正直、あまり感じが良くない。腰まで落ちたズボン、無造作にはみ出したシャツ。ローファーの踵は踏まれてぺちゃんこ。瑛里、一体どこに惹かれたの⁉︎
「なあ瑛里?今日、時間ある?」
「あるよ!」
――あるよ⁉︎ちょっと待った!
ついさっき「三人でフラペ行こ!」って言ってたの、どこの誰?もう忘れちゃったの?瑛里ったら、また尻に敷かれてる…。先が思いやられる。
「じゃあね、瑠璃ちゃん、隆也。また明日ね!」
呆気にとられる隆也。私は慣れっこ。これぞ通常運行の瑛里。むしろ清々しい。
最後尾の五人がけの席に荷物を広げて陣取る篤人くん。その隣に、幸せそうな顔で座る瑛里。マナーも何もあったもんじゃない。荷物を膝に置けば三人は座れるのに。まあ、瑛里が幸せならいいけど…。
「なあ瑛里?あのブタ、お前の友達なの?すげー太ってんじゃん。彼氏イケメンなのにな。あんなブタ連れてて恥ずかしくね?俺マジで無理〜。ないないないわ〜。ぎゃはは!」
車内に響く大声の笑い。
一瞬、頭が真っ白になった。
コソコソ話してるつもりかもしれないけど、しっかり聞こえてる。
――ブタでデブ⁉︎ 私のこと⁉︎
身体中の血液が逆流するみたいに熱い。溢れそうな涙を必死にこらえる。
早く、バス停について……この場から逃げ出したい。
隆也に聞こえてたかな。どうか、聞こえていませんように……。顔を見る勇気もなくしてしまった。
【橋羽西〜橋羽西〜】
ブッブー。
「真瑠璃、今回のル・アモール・ドゥ・ラ・レーヌも最高だったよ!」
「うん…」
「俺も食べたくなってきたな!アフタヌーンティー!」
そう言って『真瑠璃のグルメ日記』を返す隆也。変わらない笑顔を見た瞬間、こらえていた涙が一気にあふれた。止まらない。
「真瑠璃?大丈夫?」
心配そうにハンカチを差し出す隆也。その優しさに、また涙が溢れる。
「ご、ごめん…」
隆也の匂いがするハンカチ。優しさに包まれて、ますます涙が止まらない。
「瑛里と彼氏の会話、気にしてる?」
「……」
――聞こえてたんだ。
ポロポロ溢れる涙。
「真瑠璃は、俺の大切な幼なじみだよ。」
瑛里の彼氏の言葉は悲しかった。でもそれ以上に、一緒にいる隆也まで否定されたようで悔しかった。
それでも、ブタでデブな私に変わらず優しい隆也。申し訳なくて、胸がいっぱいになる。
隆也の言葉が心に突き刺さると同時に、熱いものがふつふつと湧き上がってきた。
「ただ今。」
「お帰り。」
「ママ。私、ダイエット始める!」
「え⁉︎」
「食べるのはやめない!その分ちゃんと動いて消費する!絶対ダイエットを成功させてみせる‼︎」
こうして私は、人生初のダイエットを決意した。
もう二度と、隆也に恥ずかしい思いをさせない。そして――離脱中の「美人姉妹」に戻ってやるんだから‼︎
「ぶーッッ!」
……この幸せな空気を一瞬でぶち壊すワード。言わずもがな、瑛里だ。私の気分はジェットコースターの急降下。なんて最悪な朝なの。
「瑛里、だからいい加減“ぶー”って呼ばないで。」
呆れ顔の私をよそに、まるで気にする様子もない瑛里。どうしたら、私の気持ちを理解してくれるんだろう。
「ねえ、ぶー。今日、プリクラ撮って帰らない?」
「私、パス!」
「相変わらず付き合い悪いなあ。いつになったらプリクラ付き合ってくれるのよ?」
「瑛里は彼氏と撮ればいいじゃん。って、この会話、何回目?」
ほんと、私の言葉なんて聞く耳持たない。
前に「ぶーってどういう意味?」って聞いたら、『動物のぶたさんからお借りした、ぶーだよ!』だって。悪びれることもなくニコニコしてるから、怒る気も失せたけど……でも‼︎どう考えても酷い!本当に失礼しちゃう。
「おーい!真瑠璃!」
振り返ると、隆也が爽やかな笑顔で手を振りながら駆け寄ってきた。救世主の登場だ!
「隆也!」
「ちょっと隆也!私もいる!瑛里もいる!」
ムッとした顔で、隆也の肩をつつく瑛里。
「おっ、ごめんごめん。なあ、真瑠璃のグルメ日記、書いた?」
「書いたよ!」
「見せて!」
鞄からノートを取り出す私を、瑛里が面白くなさそうに眺める。
「ねえ、今日三人でフラペ飲んで帰ろ?お願い!」
甘えた声でほっぺにゲンコツを作りながら隆也を見上げる瑛里。さっきまで『ぶーぶー』言ってたのに、この豹変ぶり!まるで大女優。
「あっ、俺はいいけど。真瑠璃は?」
グルメ日記を眺めながら、上の空で答える隆也。
「プリクラじゃないからオッケー!」
――本当は、瑛里と二人じゃないからオッケー。隆也が一緒なら、瑛里も付き合いやすい。
「そうこなくっちゃ!」
急にご機嫌になる瑛里。まったく、ほんとわかりやすい。
プシュー。
バスの扉が開き、三人で乗り込む。
隆也が日記を眺めている隣で、瑛里は不機嫌そうに日記を覗き込む。そのあからさまな態度も、まあ瑛里らしい。
「瑛里!」
バスの後方から名前を呼ぶ声。途端に瑛里のテンションが急上昇!揺れるバスの中を進んでいく。
「篤人くん!なんで?びっくり!」
……篤人くん⁉︎ これが瑛里の新しい彼氏?
正直、あまり感じが良くない。腰まで落ちたズボン、無造作にはみ出したシャツ。ローファーの踵は踏まれてぺちゃんこ。瑛里、一体どこに惹かれたの⁉︎
「なあ瑛里?今日、時間ある?」
「あるよ!」
――あるよ⁉︎ちょっと待った!
ついさっき「三人でフラペ行こ!」って言ってたの、どこの誰?もう忘れちゃったの?瑛里ったら、また尻に敷かれてる…。先が思いやられる。
「じゃあね、瑠璃ちゃん、隆也。また明日ね!」
呆気にとられる隆也。私は慣れっこ。これぞ通常運行の瑛里。むしろ清々しい。
最後尾の五人がけの席に荷物を広げて陣取る篤人くん。その隣に、幸せそうな顔で座る瑛里。マナーも何もあったもんじゃない。荷物を膝に置けば三人は座れるのに。まあ、瑛里が幸せならいいけど…。
「なあ瑛里?あのブタ、お前の友達なの?すげー太ってんじゃん。彼氏イケメンなのにな。あんなブタ連れてて恥ずかしくね?俺マジで無理〜。ないないないわ〜。ぎゃはは!」
車内に響く大声の笑い。
一瞬、頭が真っ白になった。
コソコソ話してるつもりかもしれないけど、しっかり聞こえてる。
――ブタでデブ⁉︎ 私のこと⁉︎
身体中の血液が逆流するみたいに熱い。溢れそうな涙を必死にこらえる。
早く、バス停について……この場から逃げ出したい。
隆也に聞こえてたかな。どうか、聞こえていませんように……。顔を見る勇気もなくしてしまった。
【橋羽西〜橋羽西〜】
ブッブー。
「真瑠璃、今回のル・アモール・ドゥ・ラ・レーヌも最高だったよ!」
「うん…」
「俺も食べたくなってきたな!アフタヌーンティー!」
そう言って『真瑠璃のグルメ日記』を返す隆也。変わらない笑顔を見た瞬間、こらえていた涙が一気にあふれた。止まらない。
「真瑠璃?大丈夫?」
心配そうにハンカチを差し出す隆也。その優しさに、また涙が溢れる。
「ご、ごめん…」
隆也の匂いがするハンカチ。優しさに包まれて、ますます涙が止まらない。
「瑛里と彼氏の会話、気にしてる?」
「……」
――聞こえてたんだ。
ポロポロ溢れる涙。
「真瑠璃は、俺の大切な幼なじみだよ。」
瑛里の彼氏の言葉は悲しかった。でもそれ以上に、一緒にいる隆也まで否定されたようで悔しかった。
それでも、ブタでデブな私に変わらず優しい隆也。申し訳なくて、胸がいっぱいになる。
隆也の言葉が心に突き刺さると同時に、熱いものがふつふつと湧き上がってきた。
「ただ今。」
「お帰り。」
「ママ。私、ダイエット始める!」
「え⁉︎」
「食べるのはやめない!その分ちゃんと動いて消費する!絶対ダイエットを成功させてみせる‼︎」
こうして私は、人生初のダイエットを決意した。
もう二度と、隆也に恥ずかしい思いをさせない。そして――離脱中の「美人姉妹」に戻ってやるんだから‼︎


