【橋羽西 バス停】
「真瑠璃!」
声のする方をふりむくと、隆也が手を振っている。清々しい爽やかな笑顔、隆也が人気なのもうなずける。
広瀬隆也は、私のもう一人の幼なじみ。
同じ高校に通う隆也は、医進サイエンスコースに通う、将来有望な学園一の秀才。
スラリと伸びる背に、端正な顔立ち、同級生の男の子とは明らかに一線を画す大人びた雰囲気の隆也は、小百合ヶ丘学園のアイドル‼︎
「真瑠璃、最近美味しいお店見つけた?」
「それがね。今週の土曜日に、パパが軽井沢グルメツアーに連れていってくれるの!」
私は声をひそめて、隆也の耳元でつぶやく。
誰も聞いているわけないけれど、雑誌が発売前だから本当は秘密の話。
「うわ〜羨ましいな!また、真瑠璃のグルメ日記、見せてよ!」
「うんうん、勿論だよ!」
隆也とは、昔から気が合う。
趣味も同じだし、話していてとても心地良い。
私は、高校生になった頃から『真瑠のグルメ日記』をつけている。
美味しいお店や美味しいものを食べた時には、必ず‼︎イラストと感想を書き留めている。
隆也はいつも、私のグルメ日記を褒めてくれる。
私の体重がメキメキ増え始めてからも、ずっと変わらず優しい隆也は、自慢の幼なじみなんだ!
……それに引き換え、もう一人の幼なじみときたら。
プシュー
バスの扉が開き、隆也とバスに乗り込む。
「今朝は少し空いてるな。」
私と隆也は二人がけの席に腰をおろした。
隆也は、学校でもアイドル的な存在なのに、天狗になるどころか、昔からずっと変わらない優しい男の子。
二人がけのバスの椅子も、私の方が領土を奪っているはずなのに、嫌な顔ひとつしないでこうやって、一緒に座ってくれる。隆也といると、なんだか落ち着く。
「隆也!瑠璃ちゃん!」
後ろから聞き覚えのあるキャピキャピとしした声。
明るくて甘えたこの声……。
振り返ると、瑛里が笑顔で手を振っていた。
くう〜なんてついていないんだ。よりによって、瑛里と同じバスだなんて!
瑛里は、隆也の前では絶対に私のことを『ぶー』とは呼ばない。
本当、性格どうなっているんだろう。
【次は小百合ヶ丘学園前〜小百合ヶ丘学園前〜】
バス停に着くと、瑛里がニコニコ顔で駆け寄ってきた。
「隆也と瑠璃ちゃんが一緒に乗ってくるなんて、瑛里びっくり!」
そのまま隆也の腕に飛びつく瑛里。彼氏がいても、隆也に甘える。
「俺、自習しようと思って早めに出たんだ。」
少し困ったように答える隆也。
「さすが隆也!相変わらず頑張り屋だね〜。よっ、小百合ヶ丘学園の期待の星!」
隆也の腕にすりすりしながら、瑛里はご満悦。
……まったく。私への態度と全然違うんだから。
「キャー!隆也先輩、おはようございます!」
校門を入るなり、待ち構えていた女の子たちの黄色い声が響く。
「おはよう。」
隆也が片手を上げ、にこりと笑顔を見せると――
「キャー!!」
歓声はさらに大きくなった。まるでトップアイドル。
隆也が人気者であることは、幼なじみとして誇らしい。
でもその一方で、どこか遠い存在になってしまうような、不安が胸の奥をかすめる。
……うまく言えない、この気持ち。
「隆也はほんと人気者だよね!来年のバレンタインも、靴箱パンクしちゃうんじゃない?」
隆也の隣で、瑛里は幸せそう。
……なんだか、面白くない!
「その時は、真瑠璃も一緒に食べような。」
優しい笑顔を向けられ、私の心はふわっと軽くなる。
「やったー!」
思わず両手をあげて喜ぶと――瑛里の冷たい視線が突き刺さった。
「瑠璃ちゃん、それはダメ!女の子たちは隆也に食べてもらいたいんだから。プレゼントは瑠璃ちゃんのじゃないでしょ!」
隆也の腕から突然離れると、ぷくっと頬を膨らませ、両手を腰に当ててムッとする瑛里。
……そんなに怒らなくてもいいのに。
「真瑠璃!」
声のする方をふりむくと、隆也が手を振っている。清々しい爽やかな笑顔、隆也が人気なのもうなずける。
広瀬隆也は、私のもう一人の幼なじみ。
同じ高校に通う隆也は、医進サイエンスコースに通う、将来有望な学園一の秀才。
スラリと伸びる背に、端正な顔立ち、同級生の男の子とは明らかに一線を画す大人びた雰囲気の隆也は、小百合ヶ丘学園のアイドル‼︎
「真瑠璃、最近美味しいお店見つけた?」
「それがね。今週の土曜日に、パパが軽井沢グルメツアーに連れていってくれるの!」
私は声をひそめて、隆也の耳元でつぶやく。
誰も聞いているわけないけれど、雑誌が発売前だから本当は秘密の話。
「うわ〜羨ましいな!また、真瑠璃のグルメ日記、見せてよ!」
「うんうん、勿論だよ!」
隆也とは、昔から気が合う。
趣味も同じだし、話していてとても心地良い。
私は、高校生になった頃から『真瑠のグルメ日記』をつけている。
美味しいお店や美味しいものを食べた時には、必ず‼︎イラストと感想を書き留めている。
隆也はいつも、私のグルメ日記を褒めてくれる。
私の体重がメキメキ増え始めてからも、ずっと変わらず優しい隆也は、自慢の幼なじみなんだ!
……それに引き換え、もう一人の幼なじみときたら。
プシュー
バスの扉が開き、隆也とバスに乗り込む。
「今朝は少し空いてるな。」
私と隆也は二人がけの席に腰をおろした。
隆也は、学校でもアイドル的な存在なのに、天狗になるどころか、昔からずっと変わらない優しい男の子。
二人がけのバスの椅子も、私の方が領土を奪っているはずなのに、嫌な顔ひとつしないでこうやって、一緒に座ってくれる。隆也といると、なんだか落ち着く。
「隆也!瑠璃ちゃん!」
後ろから聞き覚えのあるキャピキャピとしした声。
明るくて甘えたこの声……。
振り返ると、瑛里が笑顔で手を振っていた。
くう〜なんてついていないんだ。よりによって、瑛里と同じバスだなんて!
瑛里は、隆也の前では絶対に私のことを『ぶー』とは呼ばない。
本当、性格どうなっているんだろう。
【次は小百合ヶ丘学園前〜小百合ヶ丘学園前〜】
バス停に着くと、瑛里がニコニコ顔で駆け寄ってきた。
「隆也と瑠璃ちゃんが一緒に乗ってくるなんて、瑛里びっくり!」
そのまま隆也の腕に飛びつく瑛里。彼氏がいても、隆也に甘える。
「俺、自習しようと思って早めに出たんだ。」
少し困ったように答える隆也。
「さすが隆也!相変わらず頑張り屋だね〜。よっ、小百合ヶ丘学園の期待の星!」
隆也の腕にすりすりしながら、瑛里はご満悦。
……まったく。私への態度と全然違うんだから。
「キャー!隆也先輩、おはようございます!」
校門を入るなり、待ち構えていた女の子たちの黄色い声が響く。
「おはよう。」
隆也が片手を上げ、にこりと笑顔を見せると――
「キャー!!」
歓声はさらに大きくなった。まるでトップアイドル。
隆也が人気者であることは、幼なじみとして誇らしい。
でもその一方で、どこか遠い存在になってしまうような、不安が胸の奥をかすめる。
……うまく言えない、この気持ち。
「隆也はほんと人気者だよね!来年のバレンタインも、靴箱パンクしちゃうんじゃない?」
隆也の隣で、瑛里は幸せそう。
……なんだか、面白くない!
「その時は、真瑠璃も一緒に食べような。」
優しい笑顔を向けられ、私の心はふわっと軽くなる。
「やったー!」
思わず両手をあげて喜ぶと――瑛里の冷たい視線が突き刺さった。
「瑠璃ちゃん、それはダメ!女の子たちは隆也に食べてもらいたいんだから。プレゼントは瑠璃ちゃんのじゃないでしょ!」
隆也の腕から突然離れると、ぷくっと頬を膨らませ、両手を腰に当ててムッとする瑛里。
……そんなに怒らなくてもいいのに。


