ぶーってよばないで!

【大学 レッスン室】
「周ちゃん、あなたはどうしてそんなにピアノが上手なのですか?」
「はいっ、お答えします。私、京田周司はピアノを愛しております。」
「周ちゃん!それだけじゃないでしょ⁉︎それなら、私だって負けない!」
「僕ね、どうしたらいいと思う?」
「うん…。」
「真瑠璃ちゃん。僕ね、まだ迷ってる。」
「わかるよ。私は、ずっと側で周ちゃんのピアノを聴いていたい!でも!周ちゃんは日本だけに留まらず、世界へ羽ばたいて欲しい!でも、正直寂しい。分かる?このワガママな気持ち。」
「真瑠璃ちゃん。ありがとう。」
周ちゃんのピアノを、ずっと側で聴いていたい。これは私の正直な気持ち。
このまま、ずっと一緒にいられたら。でも、周ちゃんのピアノを、世界中の人にも聴いてもらいたい。
「はいはい、そこのお二人さん。なんで、二人で盛り上がってるの?私も話に混ぜてよ!瑛里もその話したい!」
ほっぺを膨らませて、瑛里が止めに入る。
「瑛里はどう思う?周ちゃんの今後。」
「え?周司はウィーンへ行って勉強する。」
フラッペを片手に、瑛里が断言する。
「瑛里ちゃん簡単に言わないで!日本からずっと遠いんだよ?しばらく会えないよ?」
「甘ったれたこと言うのね。昼間の冬季講習でも女の子達に『京田周司さんですよね?サインください!握手してください!』って言われて鼻の下伸ばしてたじゃん!」
「だから、そう言う言い方やめてよね。瑛里ちゃん!」
「だってそうじゃん!鼻の下伸ばして写真に収まってたじゃん!」
「他の言い方ないの?僕は瑛里ちゃんのそう言うところが嫌いなんだ!」
「別に、周司に嫌われたって良いもんね!ベーだ。」
「酷いよ‼︎瑛里ちゃんはもっと人の気持ちを考えられるようになってよね!」
「もう、周司はウィーンへ行くの!そもそも、私たちとは違うんだよ!周司は、有名ピアニスト!自分でも分かっているでしょ?」
「僕だって、僕なりに悩んでるんだよ!」
「まあまあ二人とも。」
あんなに参加したくないと大騒ぎしていた瑛里だけれど、ギリギリ冬季講習へ申し込みをして、こうして一緒に勉強にやってきた。三日間の講習も明日で終わり。これが終わると、受験への追い込みが始まる。
周ちゃんは、東京に残るのかウィーンへ行くのか。どちらにしても、私は周ちゃんのことを応援する‼︎