【日曜日 本宮先生のお宅】
今日は、本宮先生のお宅で特別レッスンだよ。瑛里はみんなのレッスンを聴くことなく、自分のレッスンが終わったらさっさと帰ってしまった。最近の瑛里は、特にやる気がないみたい。
それより、ビックニュース!
来月、周ちゃんがウィーン国立音楽大学のフランツ・リオン先生の公開レッスンを受けられることになった!
これはもう凄すぎること。夢へまた一歩近づいた周ちゃん!本当に凄い!
「ねえ周ちゃん。リオン先生のレッスン受けられるなんて凄いよね!」
「僕もびっくり。本宮先生から僕の名前が呼ばれた時は、震えたよ。今もまだ、夢なのか現実なのか自分でも分からないよ。真瑠璃ちゃん、どう思う?」
不安そうな顔の周ちゃん。
誰もが認めるほどに実力がある周ちゃんでも、不安に思うことがあるだなんて。
「周ちゃん、大丈夫!これは、夢ではない!」
「本当に?本当に?僕、夢見てない?」
「よし!周ちゃんのほっぺを、私がつねってみる!」
「お願い、真瑠璃ちゃん!」
「えいっっっ。」
「いたたたたっ。真瑠璃ちゃん、もう少し優しくお願いします。」
「ふふふふ、優しくしたら夢か現実か分からないでしょ〜。」
「真瑠璃ちゃんってば!」
私たちは、とにかく嬉しくて、楽しくて仕方なかった。周ちゃんはもう、良きライバルなんかではない!ずっとずっと遠く、雲の上の人。私の憧れのピアニストだよ。