最愛から2番目の恋

「レオニード家で初代の王になったブロディアスは西から連れられてきた剣闘士で、早い話が奴隷だ。
 アストリッツァ貴族の娯楽のために、底辺の獣人同士で殺し合いをさせられる剣闘士だった」


 レオニード王家の祖ブロディアスが、剣闘士から白虎のティグルー家の私設騎士団にスカウトされて、そこから登り詰めていく一代記は有名で、それなりに人気があるサクセスストーリーだ。


「ブロディアス王の英雄譚は、わたしも読んだことがありますが、剣闘士が奴隷だったとは知りませんでした」

「……王家が書かせた英雄譚にはそんな事は書けないが、事実だ。
 勝敗に金を賭けられての、殺し合いを強要されるんだぞ?
 それを見て大喜びする奴等が居て、気に入られた剣闘士は褒美だと宴席に呼ばれて、寝所に連れ込まれる。
 相手が男でも女でも、拒否出来ない閨だ」

「……」

「若くて強くて、見た目が良かったブロディアスは勝ち続けて、たちまち人気者になって。
 数多い信奉者の中でも1番の権力を持っていたティグルー家の娘に買い取られた。
 闘いの腕を買われてティグルーの私設騎士団に雇われた、なんて表向きで。
 実情は色目的で買われた奴隷で、娘の男妾になった」

「男妾……」

「正式に婚姻は出来ないだろう?
 神獣家の姫と外国から来た奴隷だ。
 それにブロディアスには、故郷に置いてきた番も居た」

「彼には既に、最愛が居たのですね」