最愛から2番目の恋

「…………お前も各国の歴史を学んできたのなら知っているだろう、アストリッツァは元々は獣人の国なんかじゃなかった」

 わざとなのだろうか、クラシオンはガートルードの問いには答えずに、間を空けて話題を変えた。
 どうして、彼はこの国の歴史に話題を変えたのか。


「4神虫獣の国、でした」

「そうだ、馬車にも刻まれている国章には4神虫獣、龍と蜂、虎と鷲の図案はあるが、獅子など……どこにも無い。
 それは、途中から現れたライオン獣人のブロディアス・レオニードがこの国を簒奪したからだ。
 ここガレンツァがレオニードの出身地なんてでたらめで。
 この邸は、ティグルー公爵家の本邸だった」


 その通り、父であるカリスレキア国王も言っていた
「昔はともかく、今では誰もあんな蛮国とは……」とは、そういう意味で。
 アストリッツァでレオニード家が王座について、150年以上が過ぎていても、未だにこの国は野蛮な獣人の国だと言われている。


「漆黒の龍のヴァーライル、黄金の蜂アフヴァーナ、白虎のティグルー、そして赤鷲ヴォルター、それがアストリッツァ建国の4神虫獣家で。
 その4家が、交代で王座を回していた」

「……」