最愛から2番目の恋

「春と言え、夜中は冷える。
 そんな薄着で、うろつくな」

「……もしかして、御心配をしてくださっています?」

「心配じゃない、明日風邪を引いたと寝込まれては、迷惑だからだ」

「あら、そうですか?
 ご存じのように、わたくし鍛えておりますもので、風邪などめったにかかりませんのよ?」

 わざと語尾を上げるマリィ調で話しても、それは最愛とは違うからだろうか。
 可愛げの無い妻には、少しも夫はデレてくれなかった。


「そうだったな、お前は鍛えていた。
 自分に手を出そうとした夫を取り押さえられるくらいにな。
 で? 護衛騎士と夜の逢い引きか?」

 妻の後ろに付く護衛にまで聞こえるように、クラシオンが言うので。
 彼女は笑って、背後の護衛に声を掛けた。


「ホレイシァ、しばらく下がっていて。
 わたくし、殿下と夫婦の会話をしてから戻るので」

 王太子妃と夜の逢い引き、とからかわれた護衛ホレイシァは少し気色ばんで見えたが、大人しく下がって2人から見える位置から姿を消した。