最愛から2番目の恋

 そのような訳で、夫たる国王陛下が居ない王都からの一行はガレンツァでは2軒しか無い中流ホテルに分かれて泊まったが、王太子夫妻のみかつてのレオニード家本邸に宿泊した。
 今は住む人が居なくなったとは言え、清掃などの人の手が入ればホテルなどよりも遥かに美しく、住み心地が良いからで、王妃の死の直後からこの邸での食事や宿泊の準備はされていた。


 ここには2泊するだけで、明日の朝にはカリスレキアの両陛下も到着する。
 約1ヶ月しか会わなかっただけの両親に会える喜びに中々寝つけないガートルードは、ガウンを羽織り寝室を出た。
 直ぐに警護の者が背後に付く。
 それは以前、クラシオンを取り押さえた日、彼女に
「妃殿下の護身術、お見事でございました」と感心して見せた護衛だった。


 明日になれば、父と母に会える。
 それだけでこんなに心が躍るのは、やはり精神的にまいっているからだろう。
 カリスレキアから連れてきた6人以外、誰も信用出来ない。
 今、こうして背中を預けるしかない護衛でさえ、いつ切りつけてくるか……
 周囲は止めてくれたのに、自分で選んだ道に泣き言は言いたくないが、それでも。


 両親の顔を見たら、また元気になれる。
 まだまだ、がんばれる。
 わたしはやれる。
 自分で自分を鼓舞しながら歩くと、変に昂っていたのが落ち着けて、眠れるような気がしたガートルードだったが。


 春先の花が薫る真夜中の庭には、先客が居た。

 クラシオンだった。