最愛から2番目の恋

 ガートルードは、自分が全ての人間を救えるとは思わない。
 それを隠して、救済の言葉を口にする偽善者にもなりたくない。
 ただ、クラシオンがこの国の現状をどう思っているのか。
 この国の舵取りを、将来どうしていくのか。
 愛が無くても一生、隣に立たなくてはならない夫の覚悟を、聞きたいだけだ。


  ◇◇◇


 国王陛下は、ガレンツァまでは来なかった。
 王城で行われた一連の葬儀には出席はしたが、挨拶は王太子のクラシオンに任せて、影は薄かった。

 弔問の夜に初めて顔を合わせて、挨拶をしたガートルードに、舅は言葉も無く軽く手を振って応えただけで。
 視線さえ合わなかったが、その痩せこけた様子は、普段の国王を知ることが無いガートルードからしても、異様で。
 決して口にも素振りにも出せないが、虚ろな目をして生気を失い。
 手の震えを押さえられない国王も……先は長くないように見えた。


 これが番を失った獣人の末路なのか。
 その愛の深さ、と言うよりも。
 番を求める業の恐ろしさを感じたガートルードだった。