最愛から2番目の恋

「いい温泉が近くにあります。
 夕食前に、まずは旅の疲れを癒してください」

 ベレスフォード領の公共温泉施設が気に入って、この地に家を建てた、と以前ジェイから聞いていた。
 王太子と同じ浴槽に浸かるなど、これまで想像もしたこと無かったケインだが、ジェイの誘いに乗った。


「癒しなら、お前の奥方に手を握って貰ったら、直ぐだけど?」

 ようやく、殿下にもいつもの軽口が戻ってきたようで。
 独占欲の塊のジェイに睨まれていた。



 ベレスフォードのジェイの家に1泊して、テリオスとケインはアリステア聖下を訪ねるため、居住する大聖堂を擁する聖都シェイマスに向かって出発し。
 ブレイクは、母国カリスレキアに帰国する事になった。
 3人はカリスレキアでの再会を約束して、握手した。


「俺は……」

 珍しく、遠慮がちにジェイが言い掛けるのを、テリオスが止めた。


「ジェイ君は、奥方の側に居てくれたまえ。
 ……必ず、彼女を連れて戻ってくるから、待っててくれ」