最愛から2番目の恋

 ケインは驚いて座り込んだテリオスを見ていたが、ジェイの方は無言で男とのやり取りを見つめている。
 銀髪碧眼で美しい容姿の彼が、その顔に何の感情も乗せていないと、ひどく酷薄に見える。


 いつの間にか、リデルの姿は居間から消えていて。
 ケインはこのままここに留まるべきか迷ったが、それは一瞬で。

 いつも真剣なのか、ふざけているのか、判断に苦しむ王太子の常では考えられない、迷い子の様に心許ないその様子に。
 事情は知らなくても、自分はここに居るべきだと決めて、見知らぬ男から主を守るようにテリオスの背後に移った。

 何故なら、旧知であるらしいその男は。
 明らかにテリオスに向けて、苛立ちをぶつけているようだったからだ。
 


「輿入れの前に、姫様はサンペルグに赴き、口座を開き。
 クロスティアからの賠償金、全てをご入金されました。
 この意味、紹介状をお書きになった殿下ならお分かりになりますよね?
 姫様はご自分のお命を賭けて、お覚悟を決めて、お飾りの妃になるとアストリッツァにお輿入れしたんです」 

 男の言葉遣いは崩れだしていて。
 この国の王太子に不敬極まりないが、側のジェイは止める気がないようだった。
 そしてそれは、その言葉を向けられているテリオスも、だ。