最愛から2番目の恋

 ジェイの用件が爵位云々ではないことは分かりきっていて。
 彼は今では、北大陸有数の大商会パリロゥの、このクロスティア進出における責任者となっていたし。
 何より初恋の平民女性を得るために生家を出奔し、彼女のためだけに努力をし続ける男なので、今の生活を変える気が無いのはテリオスにも、分かっていた。


「とにかく、
『来て貰えなければ話せない。
 来なければ、必ず殿下は後悔なさるだろう』とも書いてありました」

「それは、俺を誘い出そうとする脅迫犯の手口だな」


 王太子の執務室に入室する際には、例え護衛であろうと同僚から持ち物を確認されるので、ケインは手紙を持参しなかった。
 そんなわけでジェイからの手紙の実物は見ていないが、テリオスは筆頭秘書官のスノーデンを呼びつけた。
 大叔父のアリステア聖下が、テリオスの見張りに付けた彼を脅すネタは、既に幾つも入手している。


 王都からジェイの自宅があるベレスフォード伯爵領まで、馬を飛ばせば4日で着く。 
 ジェイの家に泊まると勝手に決めて、1泊の弾丸行程で10日間の休暇を、ケインと共にもぎ取る事にしたのだった。