最愛から2番目の恋

 立ち上がって、自分の妊娠を叫んだマリツァさえ、今は力が抜けたように、腰を下ろして。
 その顔色は白く、気分が悪そうに見えた。


 安定期に入る前に、懐妊を本人が口走るとは想像もしていなかったのだろう、宰相クイーネは口元を押さえ次の指示を出せないように見えたし。
 肝心の赤子の父親である夫も、立ち尽くしていたので。
 
 クラシオンの手をほどき、彼から間を取ったガートルードは誰よりも早く、夫と側妃に向かって拍手をした。


「王太子殿下、マリツァ妃、ご懐妊おめでとうございます!」

 大きくはないが、よく通る声で正妃が夫と側妃に祝いを述べたので。
 我に返った貴族達は口々に、クラシオンとマリツァに拍手と共に祝いの言葉を送った。
 それを受けつつ、貼り付いたような笑顔を見せるクラシオンを救ったのは、急遽部屋に現れ、宰相に駆け寄った伝令だった。


 伝令からの知らせに何度も頷いたクイーネは、聞き終えると王太子夫妻に近付いた。
 この場の全員が宰相含む3人に注目していて、今では誰も側妃を気にしていなかった。
 

「……王妃陛下が……見罷られました」

 聞くなり、クラシオンは右手を上げ、静かに事情を説明して、周囲に向かって閉会を告げた。
 そして、そのまま正妃にも側妃にも声を掛けず、宰相と共に会場を後にした。