最愛から2番目の恋

 お飾りには一生閨はしない、と言ってやったわよね?
 王太子の子供を産めるのは、これからもわたしだけでしょ?
 それをここで発表して、皆に祝って貰いたいの。
 そうすれば、居場所の無いお飾りは、退場して……


 怒りで、頭の中が沸騰する。
 嫉妬で、胸が焦げる程に熱い。
 もう、これ以上我慢出来ない。
 本当に吐きそうだから。
 だから……


「わたしに、子供が出来たの!」そう叫べば。


 一斉に、皆がこちらを見て。

 あんなに辛かったマリツァの痛みと吐き気は、治まった。


  ◇◇◇


 ガートルードの隣で、まだ彼女の手を握ったままだったクラシオンが舌打ちをしたが、彼は動かなかった。

 重い空気が辺りを包み、指揮者の手は止まり、次の音楽が奏でられることは無い。
 それは一瞬だったのかも知れないが、長い間だったのかも知れない。

 とにかく、誰も動かず。
 誰も声を上げなかった。