「……最初の流れから話しましょう。
 最愛様がこちらに来られたのは、わたくしが夜会のためのドレスを新調したことを、お知りになったからです」

「……ドレスを新調したのか?
 どうしてそんな勝手な真似を?」

 クラシオンは初耳だったのだろうか。
 だが激怒するわけでもなく、問う声は尖ってはいるけれど、静かに理由を尋ねる様子に。
 いささかこちらの勢いも削がれていく。


「婚姻式も行われないわたくしの、顔見せですから。
 張り切って作らせたのです……わたくしの資産から」

「……資産から? 秘かに持ち込んだ資産を持っていたと言うことか」

 想定よりも落ち着いた返しに、マリツァが口を挟んできた。


「そうなの、このひとふざけてると思わない?
 サンペルグに口座があって、そこからだって言うのよ?
 そんなの許される? 許しちゃ駄目よね?
 だから、わたし言ってやったの……」