「ぐ、具体的に?
 どう脅されたのか?」

「そうだ、まだ覚えているだろ?
 それを話せばいいだけだ、簡単だ」

「……ね、ラシィ?
 こっち見て? ……わたしを見て?」

「そんなのいいから、言えって!」


 わたしは何を見せられているのだろう?
 ガートルードは混乱した。
 最愛の番に怒鳴る夫と、そんな夫の視線をとらえようと彼の頬に手を伸ばす最愛……

 あろうことか、夫は触れてこようとする彼女の手をはたいた。
 その行為は軽くではあったけれど、当のマリツァは勿論、ガートルードにも衝撃を与えるには充分で。

 あの、べったり甘々なクラシオンが、どうした !?
 後ろに立つテレサも息を飲んだのが、感じ取れた。
 クラシオンは一体……


「じゃあ、いい。
 先にガートルード、お前の話を聞かせろ。
 何があった?」

 夫が妻の名を呼んだのは、今が初めてかもしれない。