『護身術』と『向かってくる勢いと力』を強調して、クラシオンに説明する様子を、護衛の面々に見せつければ。
 彼等はそれぞれに顔を見合せ、頷き合っていた。
 王太子が向かってきたから、王太子妃が護身術で取り押さえたのだと理解したのだろう。


「かしこまりました、一応宰相閣下とリーヴァ隊長には、報告は上げておきますが、御二人とも大事にはしたくないであろうと察し致します。
 夫婦喧嘩が行き過ぎた、でよろしいでしょうか」

「そうね、そのように取り計らってちょうだい」

「おい、お前ら!」


 以前、この2人がこの部屋へやって来た時。
 クイーネの使いが言っていた
「クラシオン殿下が最愛様を伴われて、こちらまでお越しになられたようだ、と殿下付きからクイーネまで連絡がございまして」の言葉は。
 クラシオン達の問題行動は、本人が知らないところで身内によって、逐一宰相まで報告されている、という事実を物語っていた。

 番だからと大義名分を振りかざし、この2人は10年間好き勝手に王城で過ごしていて、それを面白く思わない者も多分多いのだ。
 


「では、我々は2組に分かれて、報告と護衛に当たります。
 ……妃殿下の護身術、お見事でございました」


 これまで熱心に護衛をしていなかったガートルードの専属は、気持ちを改めたのか、きっちりと礼を取り、後の3人を引き連れて部屋を出ていった。