ガートルードが笑いながら、その手を離したので、テレサもマリツァから離れる。
  素早く移動して、2人して手を取り合って、立ち竦む護衛達の前で。
 ガートルードは害の無い微笑みを浮かべて、両手を合わせ謝罪するポーズを取る。

 
「お恥ずかしいところをお見せしてごめんなさい。
 殿下と最愛様があまりにも、目の前で仲良くされるので、ついね、悋気を起こしてしまいましたの。
 殿下も最愛様がお側におられるので、注意が散漫になられていたようなの。
 そうでなければ、このような失態はなさらない御方でしょう?
 王太子殿下が王太子妃に……男性が力の無い女に取り押さえられた?
 こんなにお恥ずかしい顛末が外部に漏れでもしたら、城内でどう思われるか……
 大事にする前に、宰相殿のご判断をお聞きになってからの方が……」

 その背後では、ひとり離れた護衛にクラシオンが助け起こされていた。


「何が、何が力の無い女だ!
 俺にこんな真似をしておいて!」

「これには力は必要ありませんの。
 単なる護身術ですから、要は向かってくる相手の勢いと力を利用して、みたいな?」