最愛から2番目の恋

 予定では、自分からではなく他から聞いて欲しかったのだが。 
 ガードルートはそこは諦める事にして、サンペルグに口座がある事を、マリツァに話した。
 これで彼女を通じて、クラシオン、そしてクイーネにも。
 本人以外、手出しが出来ない財産を、お飾りの妃が持っていることを知るだろう。


「ふっ、ふざけた事を……このまま無事に済むと」

「今回同行した5名のメイドの内、3名はサンペルグ聖教会を通じて雇った者達です。
 わたくしやメイド達の身に何かしら起これば、聖教会の調査が入るとお覚悟ください。
 財力のある者をお守りくださる神の使徒の権力に、抗う勇気がおありになるのなら、今仰った『無事で済むと』でしたわね?
 どうぞ、お続けくださいませ」 

 そこまで言ったガートルードが、顔色を失いつつあるマリツァと対峙していると、そこに例の馬鹿が飛び込んで来た。
 颯爽と最愛を助けにきたか、と面倒に思うが、仕方なく立ち上がる。



「ご無沙汰致しております、王太子殿……」

「大丈夫か、マリィ! こいつに何かされたか!」


 ……相変わらず、こんなに近い距離で大声出して、うるさい男だな。 
 クイーネめ、何が護衛だ。
 ただ部屋の前で突っ立っているだけで、全然防波堤の働きをしていない。
 この国の宰相の言う事など、全く信用出来ない。


 お飾りの妻に対して、蒼白になった最愛に何かしたと勝手に思い込んで、激怒しているのだろう。
 愛する番を抱き締めて、ひとり興奮状態にある夫の顔を見ながら。

 ガートルードは、この2人には付き合いきれない、と呆れていた。