最愛から2番目の恋

 彼のドレスをまとったガードルートの顔見せが成功したら、元々人気があったらしいが、ますますカッツェの需要は高まるだろう。


「勿論でございます!
 何を置いても、妃殿下を最優先と致しますことを、カッツェは誓わせていただきたく存じます」


 金に糸目は付けぬ、と伝えていたので、その金額は……であったが、まずは最初の1枚だ。
 これによって、これからのお飾りの王太子妃の評価も変わるのならば、安い投資だ。


「支払いは現金が良いかしら?」

「……は、王家のツケとなるのでは……」

「まさかまさか、レオニード家にそんな余裕は無いのよ?
 こちらはわたくし個人のお化粧料から支払います。
 ……ここだけの話にして欲しいのだけれど、わたくしサンペルグ聖国に、口座を持っているのですよ。
 ですから、自分の着たいドレスはそちらから用立てます」

「なんと、聖国に口座をお持ちとは……さすが妃殿下、何もかもがこちらの方々とは桁が違われます」

 ここだけの話として、さりげなく自慢をすれば。
 賢明なカッツェはその意を汲んで、これまたさりげなく社交界に広めてくれるだろう。


 サンペルグ聖国にしかない、聖教会直轄の銀行は信用と財力のある者しか口座を持てない……と言うのは有名だが。
 その真実の仕組みを知るのは、実際に口座を開いた者だけだ。
 
 それは口座名義人が死亡すれば、その残高は献金という形で全額、教会に摂取されるふざけた決まりだが。
 存命中はどんな権力からも口座を守ってくれ、地上の何人たりとも、その金を奪うことは出来ないという事。