最愛から2番目の恋

 テレサは早速メイド達を集めて、当日の髪型と化粧の作戦会議に入った。
 主役のお飾り妃の入場時間から逆算しての、前日からの流れも話し合う。


「歓迎夜会が楽しみになってきました。
 今年はこのような夜会が、後何回あるかまだ知らされてはいないのだけれど、その折には貴方に声を掛けさせていただくわ」


「……勿体なきお言葉、痛み入ります」

 睡眠不足が祟っているのか、あくびこそ無いものの。
 ガートルードに返答が遅れたカッツェは何度もまばたきをして、眠気と戦っているように見える。
 シカ獣人の彼の黒目がちの瞳に涙の膜が張る様は年上の男性なのに、いじらしく可愛いが、言うことは言うガートルードだ。



「その合間にでも、来年に向けての準備は進めて。
 とは言っても……そちらにばかり気を取られて、わたくしの依頼を後回しにしたり、手を抜いたりしようものなら、分かりますね?
 来年の東の国への旅は無いものと、心得ておきなさい」


 カリスレキアはアストリッツァから見て、東に位置する。
 カリスレキア進出を計算の上で、きっちりドレスを仕上げてきたカッツェなら裏切る心配は無いだろうが、一応釘は刺しておく。