最愛から2番目の恋

 わざと短く言葉を切って、そう伝えると。
 念のため『かも?』と付け足したのに、男の目の色が変わった。
 名ばかりの王太子妃に呼びつけられた、やっつけ仕事に本気になった。


 ガートルードの好みと要望を聞き、カッツェは手早くラフスケッチを仕上げていく。
 それを覗き見ると、こちらの意図することをきちんと理解していて、その上でより似合いそうな形に昇華させる手腕は、なるほどと唸りたくなる。


 この腕とこの容姿なら、少しのチャンスを与えるだけで、カッツェは自力でカリスレキアでの地位をものに出来るように思われた。
 それで彼のセンスを信じて、これ以上あれこれ注文をつけるより発破を掛けるだけにした。


「お飾りの妃は、飾っていくら、なのですって。
 クラシオン殿下が、わたくしに仰られたの。
 お金に糸目は付けないわ。
 お飾りのわたくしを夫が満足するくらいに飾ってみせて」


『飾っていくら』……なんて素敵で便利な言葉だろうか。
 クラシオンにこの言葉を教えたのはクイーネだろうが、よく教えてくれた、と褒めて使わしたい。


 これからも精々、この素敵で便利な言葉をあちこちで広めせていただきましょう。
 感謝するわ、ラシィ、クイーネ。