最愛から2番目の恋

 ユーシスとの婚約が破棄された時、テリオスは王家を離れ聖職者の道を歩み始めていた。
 上手く隠しているつもりでも、付き合いの長いテレサとブレイクにはバレていた。
 
 2人には何度も確認された。
「このままでは、必ず後悔されますよ」
「姫が望めば、テリオス殿下が預けられているシェイマス大聖堂まで連れていく」

 その度に、首をふった。
 彼にこの気持ちを伝えてどうなると言うのか。
 兄王子の元婚約者から告白されても、迷惑なだけだろう。


 それに、彼には夢中になった女性が居た。
 あの美しいクリスティアナに、卒業パーティーの場で婚約破棄を告げたくらいの……
 政略結婚の意味を知るテリオスにも、夢中になった最愛が居た。

 魅了された反省を見せなかったせいで、彼は王家を追われたのに。
 今でも最愛を想い続ける彼に、醜いわたしが愛を告げても、笑われてしまうだけ。


 そんな相手ではないから、優しくしてくれたのは分かっている。
 将来の義姉になるから、気遣って話しかけてくれたのだ。



 だから、このままでいい。
 そうだ、このままがいい。


 心を決めて、獣人の国へ嫁ぐ事にした。


 彼でなければ、誰でも同じ。


 
 ユーシスの代わりに、彼は復権して王太子になった。
 いつかは、また会える日が来るかもしれない。

 テリオスはクロスティアの国王で。
 ガートルードはアストリッツァの王妃で。
 そんな再会もいい。