最愛から2番目の恋

 ユーシスとの婚約は、幼い頃に国同士の条件と本人同士の年齢が合っていたので結ばれたもの。
 お互いの誕生日と聖誕祭に、誰かが選んだ贈り物をする事と。
 数年に1度会うだけの……ふたりきりで話すこともない、ただ会うだけの。

 それだけの交流を何年も続けていた婚約者が、醜いガートルードを心底嫌っているのは知っていた。
 どうにかして、この縁組みを解消出来ないか、弟ではなく自分がクリスティアナを娶りたい、と母の王妃に訴え続けているのも知っていて。


 それでも、はっきり告げられるまで。
 ガートルードはこの婚約を続けたかった。
 何故なら、そうでなければ、もう彼には会えなくなるから。


 それは、心の不貞だったから。
 婚約者からハニートラップの男娼を送り込まれても。
 周囲がユーシスの不実を声高に責め立てても。
 ガートルードだけは、元婚約者を責めなかった。


 わたしも、ずっと、貴方を裏切っていました。
 ずっと、貴方の……弟が好きだったんです。
 テリオス様だけが、美しくないわたしに優しくしてくれました。
 美しいものが好きな貴方に冷たい扱いを受けたわたしを、彼だけが気遣って話しかけてくれたのです。
 絶対に知られてはいけないこの気持ちを抱えたままで。
 わたしは、彼の義姉になろうとしました。