最愛から2番目の恋

 立て板に水の如く、アストリッツァの言葉でそこまで言えば、さすがのクラシオンも出ていくしかなく。
 馬鹿なラシィは最愛のマリィを連れて、腹立ちを隠すこと無く退場した。


 扉を閉めると同時に、テレサが文句を言おうとしたのだろう。
 口を開きかけたその時、またもや閉めたばかりの扉が叩かれた。


 あの馬鹿が戻って来たのだろうか?
 忘れ物など無いはずだ。
 何故なら、夫がさっき妻の部屋へ持ち込んだのは、最愛の番がひとりだけ。
 そのマリツァも手ぶらだった。


 少しの間を置き、また扉がノックされた。
 その控えめな音は、あの2人とは明らかに違う。
 テレサもそう感じたのだろう。
 扉を挟んで、相手に誰何したところ、女性の声で
「クイーネの使いで参りました」と答える。


 クイーネは、カリスレキアの女性7人を出迎えた宰相の名前だ。
「本日はお部屋で夕餉を取っていただき、ごゆるりとお休みください。
 これからの事は、明日にでも」と下がったので、今日はもう会うことは無いと思っていたのだが。

 ガートルードが頷いたのを確認してから、テレサは扉を開けた。


「お休みのところ、申し訳ございません。
 クラシオン殿下が最愛様を伴われて、こちらまでお越しになられたようだ、と殿下付きからクイーネまで連絡がございまして。
 明日にでもゆっくりと、とお伝えさせていただいておりましたが、取り敢えずお耳に入れたき話もございます、との事。
 王太子妃殿下のご都合がよろしければ、1時間後にこちらまで参らせてもよろしいでしょうか?」