「まぁまぁ、そう熱くなるな」と宥める様子を見せる兄、王太子のサージェントも本音は反対したいようで、裏ではエレメインを煽っている。
 姉と兄は、醜女と悪口を言われる妹ガートルートを大切に想っていたし、それは彼等の両親である国王と王妃の両陛下とて、同じ気持ちだ。
 国外では容姿をどうのこうの貶められるガードルードだが、国内、特に家族からは溺愛レベルで愛されている。


 そんなガートルードが醜女と言われる理由は、ただ1つ。
 王族としては美しくない、だからだ。
 
 これは何処の国でも同じだが、王族や高位貴族達は皆、強かったり美しかったりする人間と婚姻を結び、血を繋げていく。
 それは自ずと、より強くてより美しい人間を生む『選ばれし血』だ。

 そんな状況下で生まれたカリスレキア現国王と王妃の第3子ガートルードは、容姿端麗な両親や兄姉とは違い。

 ごく普通の。
 一般的な。
 平民ならば、醜女などと言われないような。
 そんな普通の容姿の20歳の女性だ。

 だが王族であるならば、普通では許されない。
 人より秀で、人より美しくなければ、他国では陰口を叩かれる。
 深い意味の無かった陰口は、広まる程に悪意をおびていく。
 そうして、いつしか彼女の名前の前には、この言葉が付くようになった。


 『カリスレキアの醜い方の姫』と。