最愛から2番目の恋

「じゃあ、わたしに怒ってない?」

「どうして君に怒るの?
 自分には腹が立ってるけど、君には怒ってないよ?」

「ご自分に怒ってる?」

「ちゃんと説明しなくて、申し訳なくて」
 

 まだ話していなかったけれど、カリスレキアに送る前に、クロスティアで会わせたい人達が居ると言う。
 その人達とは、例の癒しの聖女のご夫婦で、必ずガートルードを連れて帰ると約束したそうだ。
 その後でカリスレキアへは自分が送りたい、父からは既に許しも得た、と初めて聞かされた。


「ごめん、本人に言う前に、先に周囲から了解を取るのはこれで最後にする。
 俺は勝手に段取りを考えてしまうところがあって、人をよく怒らせる。
 これからは、きちんと事前に君に話すから、今回は許してくれる?」

「えぇ、これからはそうしましょう、お互いに」

 クロスティアの王太子に怒っていると本人に伝えられる人がいる事に驚きながら、自分も彼の反応ばかりを気にせずに、これからはどんどん気になるところは話そうと決めた。

 いくら好きな相手でも、変に気を遣い続けていては、長く共に生きてはいけない。

 彼の隣に立ち続けるために。
 自分に誓ったガートルードに、テリオスが顔を寄せて囁いた。


「君のことはガーティじゃなくて、トゥルーディと呼んでもいいかな。
 ずっと、俺だけがそう呼びたかった」