この時点で式を中止にするのであれば、それは元々あげる気が無く、何の用意もしていない、と証明したようなもの。
 それでも、金を引っ張りたくて。
 婚姻式の準備のため1ヶ月前には入国を、と図々しく申し入れてきたアストリッツァだ。
 ここで金を送られてもそれは何処かへ消えてしまい、難癖付けて、必ず婚姻式は中止となる。



「左様でございますか。
 それでは、明日と言わず今夜にでも、使者を立ててください。
 婚姻式は中止となりました故、カリスレキア国王王妃両陛下におかれましては、遠きアストリッツァまでご足労の必要無し、と」


 そうだ、婚姻式などの茶番は必要無し。
 それよりもっと、閨など必要無し。

 下手にクラシオンとの間に子供が出来れば、この国ならば。
 カリスレキアの継承権を言い出しかねない。
 他国に嫁に行った姫には、母国の継承権を与えないのが普通だが、その普通に横車を押し入れてくるのがこの国だ。


 こちらから言い出さなくても、馬鹿からの宣言に。
 喜んで乗らせて貰うお飾り妃だった。