テーブルを挟んで座る2人と1人の図は『あの日とは反対ね』とかつて1人で、ラシィとマリィの2人と向かい合った初対面の日を、ガートルードに思い出させた。


「あー、毒のせいで指を1本失くしたと聞いた。
 体調はどうだ? まだ痛むか?」

「ご心配をおかけして、申し訳ありません。
 鎮痛薬が切れると多少は痛みますが、今では、かなり元気です」

 痛々しそうにクラシオンが、ガートルードの膝の上に置かれた左手を見ていた。
 今でも薬が切れると、左手を抱き締めて、多少どころではない痛みを逃そうと頑張っていて、背中をテリオスに擦って貰っているが、クラシオンにはそんな弱いところは知られたくない。


「お前からクイーネの事を聞かれて、これからはあの父娘に気を付けようとしていた矢先にな……」

「そうですね、わたくしも余計な真似を致しました」

「で? 本当はクロスティアの王太子との婚約が内定していたって?
 そんなことは、一言も聞いていなかったが?」

 あんなに帰れ帰れ、と連発していたクラシオンが、文句を付けているような物言いをするのは何故なのか。

 ガートルードとテリオスは顔を見合わせた。