契約をしているガートルードを毒殺しようとしたせいで、サンペルグの取り調べを受けた彼女を、あの強欲な組織が見逃すはずはないと思った。

 彼女はまだ何本かの毒針を持っている。
 その全てが銀の毒かも知れないが、即効性の金の毒よりも、遅効性の銀の毒の使い手の方が、きっと様々な場面で、使い勝手がいい。
 それに加えて、アレッサンドラはまだ32歳。
 彼女さえ確保出来れば、彼女から子供も、その子供も……
 黄金の蜂の血筋を、サンペルグは飼い続けられる。


 また新たに、彼女は違う使命を与えられて、それに従うのだろう。
 しかし、テリオスはアレッサンドラが簡単に解放同盟について自供するのが不気味だと言っていた。
 物心がつく以前から組織に属していながらも、忠誠心など皆無で。
 彼女がただ個人の嗜好のために、都合が良いから組織の一員として行動しているのだとしたら……


 アレッサンドラが姿を変えて、再び自分の前に現れた時、果たしてそれを見破れるのか。
 さすがのサンペルグでも、眼球までは入れ換えられない。
 目は人の本質を映す。
 あの時、アレッサンドラが見せた、歓喜にも似た恍惚とした……
 目の前で人が苦しむ様を想像した時の瞳の輝き。
 あの瞳を忘れなければ、彼女だと分かるのだろうか。


 いつか、また、どこかで。
 アレッサンドラと出会う日が来るような気がして……

 ガートルードは、それを見抜く自信がない。