母国侵攻回避のために嫁入りを決めたガートルードの為に。
 これだけは譲れない条件として、アストリッツァへの返答に追記したのだ。
 そしてその条件を飲んだからこその婚姻なのに。
 妃の到着初日に、政略婚の夫自ら文句を言いに来るとは。
 この国の程度が知れると言うものだ。


「綺麗なドレスを着て、豪華な式をあげたいのなら、明日にでもカリスレキアに使者を立て、金を送ってくれと泣きつけ。
 父上が持たせる金が少ないから、わたしは妃としての立場がない、とな?」


 おかしな話を真面目に言う男の頭のなかが信じられない。
 お前の父親のせいでなどと言うが、国王の一存だけでは今時国を動かせない。

 それに、嫁入りの話は半年以上前に決定していて、本当に挙式するつもりであったなら、各国にも知らせはしていただろう。
 たかが王太子の成人の宴ごときに、近隣諸国を招いた国が。
 その王太子の婚姻式に他国を招かない訳がなく……
 1ヶ月前に中止になど出来るわけがない。