「今では婚約も解消されましたのに、わたくしにまでお知らせくださってありがとうございました。
 王都のクラシオン殿下には?」

「王太子殿下は、既に王都を立たれ、こちらに向かわれております。
 途中合流出来るように、コーウィナでご到着を待つように、伝令には申し伝えております。
 失礼ながら王女殿下に置かれましては、亡き盟友アマンドからも殊の外、気を配るようにと頼まれておりましたので、ご報告にあがった次第です」

「そうですか、宰相殿が……」

 あぁ、ここにも『失礼ながら置かれましては男』が居た、とガートルードは、いつもそう言っていたクイーネを懐かしんだ。

 リーヴァとは、これまで言葉を直接交わした事はなかったけれど、クイーネとは盟友だと、ファーストネームで呼ぶところをみると本当に親しくて、友の口癖が移ったのだろうか。
 それとも、近衛隊長の口癖が宰相に移ったのか……


 クイーネはお飾りの妃にも、気を遣ってくれていた。
 本当に王家に忠実なひとだった。
 だからこそ、利用されて……