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 アストリッツァ王妃の毒殺、霊廟爆破の従犯、及びガートルード毒殺未遂の重要参考人として、尋問を受けた後、厳重に警備された馬車で王都へ護送されたアレッサンドラ・クイーネの乗った馬車が襲われ、彼女の行方が不明だと一報が入ったのは、ガートルードが目覚めて2日後だった。

 ようやく寝台から離れられたガートルードだったが、それでもまだ鎮痛薬とは、完全には離れられなくて。
 薬に依存するのが怖くて、傷が疼いてもいいからと注射の間隔を延ばし始めた日の事だ。

 
 彼女の供述調書の写しをテリオスが手に入れてくれて、ガートルードに読むのは疲れるだろうから、とそれを読み上げ始めた時に、まだガレンツァに残って残務処理に当たっていたリーヴァ隊長が本邸に現れて、その旨を知らせてくれた。


「霊廟の現場検証の立ち会いと、サンペルグ教会からの尋問を済ませまして、王都へ送る途上でした」

「あの女が行方不明だと言うのは、護衛に付いていた者の証言か?」

 ガートルードの隣でその報告を聞いたクロスティアの王太子からの問いに、アストリッツァの近衛隊長は首を振る。


「いえ……護衛に付けていた5名は全員死体で見つかりましたが、あの女だけが見つからず。
 恐らくアレッサンドラが入っていたと思われるアストリッツァ解放同盟の仕業か、と。
 このまま捜索は続けますが……」

「……たった5人の護衛で、厳重警備と言えるのか?
 護送情報もだだ漏れで、軍備には力を入れてても、中に向けてはスカスカだな」

 それだけ言ってテリオスが黙ってしまったので、ガートルードは隊長がわざわざ自ら報告に来てくれた事を労った。