最愛から2番目の恋

「アストリッツァへの輿入れの時には、これは真実の結婚じゃない。
 何年掛かっても、必ず離縁させて君を取り戻すと決めていたから、渡さなかった、と仰っていた」

「そんな事を父が……」

 アストリッツァへ旅立つ日、難しい顔をしていた父を思い出した。
 

「けれど、今度の嫁入り先は腹黒だろう?
 娘の守り刀になれば、と渡すおつもりで持ってこられたそうだ」

 今度の嫁入り先は腹黒、その言葉を聞いて。
 ガートルードは、今の状況のおかしさに今更ながらに気が付いた。

 
 そうだ、ここは王太子妃の寝室。
 どうして、テリオスと2人きりなのか。
 何故、他の人はなかなか来ないのか。
 このひとは、わたしが目覚める前からずっと居たのか。


 これまでの関係性ならあり得ない状況に、一気に血の気があがるが、確認する事にした。
 さっきは、こんな話題はしない方が、と思っていたが、目の前で嫁入りとまで、テリオスは口にしたのだ。


「嫁入り先は、って……どうして、その様な話に?」

「これを見てくれないか」

 テリオスが懐から取り出したのは、1通の美しい封筒だ。
 寝たままで受け取るのは失礼なので、起き上がろうとしたが、右手のみでは上手くいかない。
 ガートルードはテリオスに助けられながら、ゆっくりと上体を起こして、寝台の上で座り直した。