最愛から2番目の恋


 長い夢を見ていた。
 昔の夢だ。


 ゆっくりと重い目蓋を半分開ければ、昨夜から泊まっていた本邸寝室の天井画が見えた。


「姫様! あぁ、姫様……」

 耳元で安堵したようなテレサの声がして、急いで踵を返した彼女の足音が部屋を出ていくのが聞こえた。

 もう側には誰も居ないと思っていたのに、誰かの手がガートルードの頭を優しく撫でた。
 まだ頭の芯が目覚めていないせいで、再び目を閉じていたので、それが誰なのか特定出来ない。


 それでも、「腕……わたしの……」とかすれた声で尋ねれば、
「あるよ、腕はある」と、その人は答える。


「毒が、銀の……」

「指だけ……ごめん、薬指だけ落とした」


 薬指だけ、と聞いて、目蓋を開けた。

 答えた人は、テリオスだった。


  ◇◇◇


 テリオスに介助されて、目の前に失くしたはずの左腕をかざしてみる。
 確かに肩にくっついている、とガートルードは自分の目で確認した。
 水差しから吸飲みに注がれた水を、こぼしなから飲んで喉を潤せば。
 喉の渇きを潤すその冷たさに、まだ頭はすっきりしていないが、これは現実だと実感した。


「本当に、腕がまだちゃんとありますね」

「……そうだ、腕はまだちゃんとあるよ」

 彼女の言い方がおかしかったのか、それに合わせて答えたテリオスが安心したように泣き笑いの表情を見せた。