出会って10年と聞いていたのだが、なかなかどうして。 
 2人の仲は、未だに熱愛発情期といった感じで。
 甘さ、というよりは熱さにこちらがやられてしまいそうだ。
 つくづく自分が番など居ない、普通の人類で良かったとさえ思う。



「ねぇ、ラシィ~
 わたしもこの部屋が良かったのに?
 どーして、彼女がここで、わたしの部屋の方が狭いの?」
 

 あぁ、良かった。
 最後の台詞は疑問文で正解よ。
 だけど、他はおかしいから、ちゃんと直してね。
 じゃないとわたしは、貴女が話す度にその疑問形で良かったのか、そこだけが気になって、肝心の内容が聞き取れないから。
 わたしの事を彼女と呼ぶのは、見逃しましょう。
 細かいことをいちいち言うのも大人げないもの。

 この2人と居ると、口に出せないことばかり考えて、わたしは無口な女に見えるわね、と考えて。
 ガードルードは思わず笑みがこぼれてしまうのだが、側妃の方ばかり見ている夫は気付かない。


「マリィ、お飾りとは、飾っていくらのものさ。
 俺は必要ないと思ったが、宰相がな。
 建前だけでも、きちんと遇さ無くてはならないらしい」


 愛する番マリィの可愛い文句に、ラシィなる馬鹿がにこやかに答える。

 
 ラシィとマリィの2人だけでこのまま会話を続けるのなら、この部屋を出てからやってほしいな、とガートルードは夫の顔を眺めながら考えていた。