ひと息ついて、夕餉をいただいたら、今日は早めに休みましょう、と外来組の皆で寛いでいたところに、招かれざる客が現れた。


 夫クラシオン・レオニード・アストリッツァと。
 その最愛、側妃となるマリツァ・ダエフの2人だ。
 はっきり言って、今日は会いたくなかった迷惑な2人だが追い返せるはずもなく、通すしか無かった。


 彼等は王城内とは言え、一応ガートルードの部屋だと言うのに、断りもなく1番立派なソファに偉そうにふんぞり返った。


 目の前の夫、クラシオン・レオニードは背中辺りまで伸ばした赤毛と。
 よく言えば金色、実は黄色がかった薄い茶色の瞳の持ち主で。
 体格は立派で容貌も整った、所謂美丈夫の類いなのだろうが、大柄な男の圧迫感が暑苦しくて。
 如何せんガートルードの好みではない。

 その隣で、べっとりねっとりと夫の左腕に絡み付く10年来の番とやらは、白髪に赤い目をした、何処か怪しい雰囲気を漂わせた美女で、やたらと部屋の内部を眺め回していた。


 獣人の番のシステムにあまり詳しくないガートルードは、クラシオンの番が同類のライオン種なのだろうと思い込んでいたのだが、並ぶ2人を見ていると、そうではないことが分かった。

 猛獣系と爬虫類系の、双方肉食なのはご愛敬。
 熱血と冷血で体温が合わなそうな2人だが、その愛情の深さは尋常ではない気がした。