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アストリッツァ国内に入ってから2日で、都入りして。
カリスレキアからここまで10日かけての馬車の旅は、天候には恵まれたが、遠路強行軍に慣れていない女性7人にとっては、過酷なものであった。
王城に到着しても、結婚相手やその両親、つまり王家の者は誰ひとり、他国から輿入れしてきた花嫁の迎えにも出なかった。
国を代表して出迎えた宰相は、丁寧にここまでの旅を労い接してきたが。
侍女のテレサの顔色は変わり、お付きのメイド達は顔を見合わせていたけれど、肝心のガートルードは平気だった。
却って、長い旅路に疲れはてていたので、長々とした意味の無い歓迎が無くて、早く部屋へ入れて嬉しいくらいだった。
その上、通された部屋は王太子妃の部屋として相応しい豪華な作りで。
精神的には蔑ろにしても、環境は冷遇する気は無いようで。
そこも気に入って、不必要な歓迎の式典など無いのは、こちらに対する気遣いかと感謝したい程だった。
これなら、覚悟していたよりも気楽に過ごせそうだ。
幸先はいい、と安堵したところだったのに。



