最愛から2番目の恋

 決してガートルードには向けられなかったが、自分を厭う母と婚約者に向けていた、人を馬鹿にしたような、あの微笑みを彷彿とさせる。


 薄茶の髪に、眼鏡を掛けていても。
 年々ひどくなっていったあの嗤いを、一瞬だが見間違えるはずはない。


「お母様……あの新しい侍従の名前を教えてください」

 彼の姿を目で追い、母の耳元で囁けば。


「あ、あのね……彼の名前はミルトン。
 マーカス・ミルトンよ」

 アンジェリナもまた、小声の早口で囁き返す。



 マーカス・ミルトン?
 それは誰だ?
 ミルトンなんて貴族は、カリスレキアに居たか?
 馭者の隣ではなく、両陛下と同乗してきた侍従。
 マーカスが余程有力な貴族家の子息でなければ……


 けれど、どう見ても、父グロスターが連れてきた侍従のマーカス・ミルトンは……


 クロスティアの王太子殿下、テリオス・ミロードじゃないか。