「へぇ、どんな醜女が来るのかと思えば、噂よりは見られる顔だ」

「……」

 アストリッツァの王太子クラシオンとの初対面の台詞がこれだ。


「ラシィ、そんな事言っちゃ可哀想よ?
 彼女、ショックで何も言えなくなってるじゃない?」



 ……ラシィ、だって。
 26歳にもなって、子供みたいな愛称で呼ばれてやに下がって、馬鹿だろう。
 女は女で言葉の語尾を上げて、どうして疑問文にする?

 別にショックを受けておりませんが。
 ただ、驚いてはいます。
 お飾りとは言え、初対面がこれではね。

 内心そのように呆れ、それと共に少し面白がりながら。
 複雑な感情を隠すのは、ガートルードの得意技だ。
 

 まだ夕刻であるのに、先程まで愛し合っていたのだろうか。
 目の前の2人からは同じ匂いがしている。