最愛から2番目の恋

 それでいい。
 それがいい。


 彼でなければ、誰も要らない。


 
 ガートルードは、そんな想いをおくびにも見せない。
 目の前に停まったカリスレキア国章を刻んだ馬車から先ずは侍従が降り、手にした黒い毛せんを敷くために腰を折った。

 馬車の前には護衛が2騎。
 1人はお馴染みのブレイク・パーカーだったが、もう1人は金髪の見たこともない騎士だ。
 国王と王妃の側に付く近衛は、大体見知っているのだが、誰だろう。
 ガートルードが母国を離れて1ヶ月と少し。
 新しい護衛だとしても、そんな短期間で両陛下の馬車を先導する大役を?


 何となく納得できないまま、降りてきたカリスレキア国王と王妃に、最上級のカーテシーで挨拶をする。
 頭を上げ、視界の端に居る侍従に目を止めた。

 はっきりこちらに顔を向けないのは、礼儀からだろうが。
 これもまた、見覚えの無い男だ。

 一応の表向き、違う国の王族同士の堅苦しい挨拶が終わり、母のカリスレキア王妃アンジェリナに抱き締められながら、ガートルードは頭に浮かぶ面影を払い落とそうとする。

 あの侍従の姿に見覚えはないけれど、一瞬見えたあの微笑みは。
 ステファノ・ヴァルチを見ていたあの微笑みは。