最愛から2番目の恋

「それは、まだ懐妊していなかったからです。
 わたしとの正式な婚姻は、1年延期されました。
 わたしなら、お飾りよりも先に、彼女を狙います。
 アストリッツァは庶子でも跡が継げる。
 まだ14歳の公女では、道義的に貴方と共寝は出来ないでしょう。
 その間に、マリツァ様は何人生むのか? と考えたら、将来邪魔なのは、貴方の最愛が生んだ御子様です。
 これが杞憂に終わってくれれば、
『だから、醜女は馬鹿なんだ』と後から幾らでも文句は受け付けます。
 ですから、ここはわたしに任せて、貴方はひと足先に王都へ戻ってください。
 10年も貴方に尽くしてくれた最愛様を、守らなくてはいけません」

 さっきまでの、どこか冷めた様子だった夫の顔色が変わったのが、月明かりのみの真夜中でも分かった。


「だが、明日は納体の……」

「番に夢中な愚か者を、10年間演じたのですよ?
 懐妊した番が心配だとか、もう離れているのに我慢出来なかったとか、後から開き直ればいいでしょう。
 幸い、明日は国外からの来賓はわたしの両親だけですし、参列するのは近親者と王城勤務の者達とガレンツァの有力者のみ。
 陛下の御子様は貴方だけなのですから、今更こんなことでは、継承権は取り上げられません」

 そうだ、番だ最愛だと演じた続けたからこそ。
 国王が番を失って、我を失って、儀式に参列出来ない今だからこそ。
 その理由でも許される。

 ここは、番を優先する獣人の国だから。