いや、特使だけではなく、夫となるクラシオンからもどう見られてもいい、くらいに冷めていた花嫁は。
 メーリン公国大公ファンの立ち会いのもと。
 カリスレキア特使の手から、アストリッツァ特使の手に渡された。
 これで、母国との縁は切れた。


 これからはカリスレキアの第2王女ではなく。
 アストリッツァの王太子妃としての人生が始まる。
 


 着替えも何もかも、カリスレキアの物はアストリッツァには持ち込めない決まりとなっていて。
 中間地点のメーリン公国を出発前には、彼女は勿論の事。
 入国を許されたテレサと5名のメイドの服もアストリッツァの物に着替えをさせられた。


 装いを改めさせられてから、ブレイクは姉のテレサとは話していたが、ガートルードが今生の別れにこれまでの働きを労っても、ただ頭を下げるだけだった。



 末の姫の矜持と決意を想い涙する母国の皆に、別れを告げて。


 明るく微笑みながら、彼女はアストリッツァの馬車に乗り込んだ。