そうそう、その調子でどんどん皆から嫌われてしまえばいい。
 正直に言って、メーリン公国は小さな国だ。
 アストリッツァの特使風情が侮る程に。
 カリスレキア側が大公の同情を得られていても、それは公国付近を流れる潮目で変わる。



 それでも……先ずは、こちらが1点先取。
 何点先取で決着がつくのかは、神様次第だが。
 これからは、ひとつひとつの出来事がアストリッツァとの勝負だ。

 そのひとつひとつは小さくても、加算されれば大きなものになるかも知れない。
 いつか勝負が付く日を、それだけを楽しみに。
 敵国とも言える獣人の国で、わたしは生きていく。

 

 一応簡単な謝罪の言葉を口にして、無礼にも真正面からアストリッツァ特使は、まじまじとガートルードの顔を見る。
 その表情からは噂よりもましだと安堵したのか、それとも噂通りの醜女だと呆れたのか、どちらとも判断がつかない。

 その不敬な態度は、ガートルードの背後に付くカリスレキア一同の怒りを募らせたが、彼女自身は特使ごときに自分の容姿をどう受け止められたのかは、どうでもいい。