昼間の明るい海とは違い、夜の海は幻想的だ。
「俺は夜の方が好きなんだ。だからよく気晴らしにくる。この『海』を見ていると心が落ち着いてくるだろ」
「はい……」
不思議だ。
昼間あった事も、全て忘れていくような気がする。
ここでは無の顔を作らなくてもよい事も、私を広々とした気持ちにさせた。
そう、気づいたら私は毎日ここにいるうちに表情が出せるようになっていた。
玲音以外に人がいない。
気を張らなくてもいい。
そう思ったら自然と暖かい気持ちになる。
そのまま、私たちは砂浜に座って『海』をしばらく眺めていた。



