耳を澄ますと、微かに呼吸音が聞こえた。

「……玲音」

私はベッドの横に座り、小さく声をかけた。

ありがとう。夢の世界に呼んでくれて。
ありがとう。共に時間を過ごしてくれて。
ありがとう。いつも励ましてくれて。
ありがとう。私の『無の心』を溶かしてくれて。
ありがとう。私にたくさんの感情を与えてくれて。
 
言い切れないありがとうの数々。

でもこれからは直接伝えたいんだ。

王子、いつまで眠っているの?

そろそろ目覚める時間だよ。