眠り王子と夢中の恋。

「え?美夜、嘘だろ」

「なんで玲音くんのこと……?」

兄と母がほとんど同時に口に出す。

「……美夜ちゃん、玲音のこと、思い出したの?」

悲しそうに問いかける璃來さん。

ああ、やっぱり玲音は……。

璃來さんの、弟だったのだ。

どうして、今まで気づく事ができなかったんだろう。

小春から如月という苗字を聞いた時、まず浮かんだのが同じ苗字の璃來さんだった。

まさかそんな偶然ある訳ないと思っていたけれど、そう考えると分かる点がいくつもあった。

璃來さんに弟がいたこと。

弟がいたのにいつも一人で家にいたこと。

兄が言っていた『璃來の弟くんが目覚めなくなった』
というのは、死んだという意味ではなかった。

そう、別の、『目覚めなくなった』──。