「開けるよ〜……美夜?どうしたの?」
はっとした。
いけない、父のことを思い出していたら時間が経ってしまっていた。
時計を見ると、仏壇の前に正座してから10分経過していた。
いつもは義務をこなすように淡々と供えたり正座したりしているから、2分ほどで終わるのに。
「風呂沸いたけど。入る?」
頷くと、私は立ち上がった。
少ししびれた足に痛みを感じる。
「……そういえば明日は……の日だったよな……」
私と入れ替わり仏壇の前に座った兄が何か言っているのが聞こえ、足を止めかけた。
明日は特別な日だった……?
まぁ、父の命日か何かだろう。
私は父の命日さえ覚えていない……。
──それほどどうでもいいんだな、実の父なのに。
そう、誰かに言われている気がして。
私は今度こそ踵を返し、部屋を後にした。



