眠り王子と夢中の恋。

「大学ではね、みんなに悟られないようにいつも笑顔を繕ってた。完璧にバレてないって思っていたのに、同じ講義で隣の席になった伊織に見抜かれたの」

「まじでバレてないって思ってたの?俺にはバレバレだったんだけどなー」

「……伊織だから、気づいたんじゃないの?」

「ははっ、まーたそんなこと言って」

全員亡くなって悲しみに沈んだ璃來さんを、兄だけが気づいて助けたなんて。

「そんな漫画みたいなこと……」

「起こるんだよ、美夜」

兄が微笑みながら私が言いかけた言葉を攫った。

「どんな漫画みたいなことでも、おとぎ話のようなことでも、起こるんだよ。いや、起こせるんだよ」

私は少し言葉を失う。