眠り王子と夢中の恋。

「さらに一年後、璃來の弟くんが目覚めなくなったんだもんな」

兄弟まで……。

そんなに辛い思いをしてきたなんて、全く今まで感じられなかった。

……感じられなかったくらい、璃來さんはいつも笑っていたから。

「私以外みんないなくなって、ずっと誰もいない家で一人絶望してた。でも伊織に支えられて、本当に救われたの」

その時、ずっと暗い表情をしていた璃來さんがフワリと笑った。

「伊織は幼なじみみたいな関係だったんだけどね、別の高校に入ってからは話す機会もなくなってた。
それでも大学は偶然同じところに受かったのよ」

どこか遠い目をして話す璃來さん。

横で彼女を見ている兄の目には、優しさと愛しさがあふれていた。